調理室に来た子どもたちが「うどんのだしの匂いがする」と鼻をクンクンさせます。「ほら、今日のだしはこれよ」とだしの入ったボウルを差し出します。「今日はこれでお味噌汁を作るよ」と伝えると「うどんのだしと同じや・・・」と呟きます。後日、食事をしている時、味噌汁に顔を近づけ匂いを嗅ぎながら「だしのにおいがする」と言いました。子どもたちが素材に目を向け、素材を知る体験をしています。
11月24日は和食の日。和食文化を次世代に継承するために活動を展開している和食文化国民会議で制定されています。子どもたちの目の前で出汁の素材となる昆布・いりこ・削り節を見せ、それぞれでとった出汁の利き比べ。そして最後にすべての材料を合わせてとった園の出汁を飲んでみました。「これが一番おいしい」という子どもたちの声が聞こえます。これが本物の味・旨味に出会う瞬間です。和食には出汁は必要不可欠です。出汁に興味を持ち、和食に興味を持ち始めます。そして、いろいろな料理に出会うことで、発見を楽しんだり、考えたりして、様々な食文化を知っていくことに繋がっていきます。
毎年、そらまめやグリーンピースのさやとりを子どもたちがします。そらまめのさやをポッキンと2つに折ると豆を取り出しやすいことを経験するなかで発見したり知ったりします。また、さやの中を撫でながら、「ふわふわや〜そらまめくんのベッドみたい」とつぶやく子も多いです。グリーンピースご飯を食事で出すと「お手伝いしたグリーンピースが入ってる」「甘くておいしいな」と、自ら調理し、食べる経験が、特別な食事になります。
“今”しか食べられないすもも。毎年食べている経験から記憶として残っていたのか「これ、知っとる」「ちょっとすっぱい。あれ?おいしいかも」
4種類のみかん(デコポン・スイートスプリング・伊予柑・甘平)の食べ比べ。「スイートスプリングの皮は硬いなあ」と呟いたり、伊予柑の薄皮だけが口に残り「なんか変な感じがする」と難しい表情になったり、子どもたちは自分が感じたことや自分の好みのみかんを教えてくれます。みかんの色、形、香りに興味をもち、たくさんの種類があり、味や食感がそれぞれ違うことを知ります。
栽培活動(栽培・収穫・調理)を通して、子どもたちは様々なことを経験します。
発見する喜び、収穫する時期、道具の種類や使い方、収穫したものを料理する。
みんなで食べる喜びを味わうことなどです。
「昨日より大きくなってる」「もう食べられるかな」と自然の力に出会います。
身近な食材に親しみをもち「いのち」をいただきます。
また、栽培活動をきっかけに、食材に興味をもち、
食べられなかったものが食べられるようになります。
園庭の木の実がだんだんと実ってきていることを子どもたちは、
まっさきに見つけて「そろそろ色がついてきたよ」と食べる時期に気付きます。
園庭で過ごす中で季節や時の流れを感じています。
入園時には必ず家庭での食事の様子を聞き、アレルギー食の確認をします。
また、園生活が始まってからも保護者と話し合ったり、授乳・離乳の支援ガイドを参考にしたりしながら離乳食を進めます。
初めて出会う食材に、どんな反応や表情を見せてくれるか、最初に家庭で共感できることは、保護者の特権です。
また、一歳半を過ぎる頃、味の違いが分かり始めると好き嫌いが出てきます。
味にも生き方にも、自己主張の始まりです。
「味の違いが分かってきたのだな」「大きくなっているな」と喜びます。
食事を通して、保護者と共に子育ての喜びを分かち合い、子育ての楽しみを感じられるように寄り添います。
園の生活にも慣れ、初めての食事の様子です。家庭では食欲旺盛と聞いていました。ランチルームの椅子に座った時、食事をすることが分かったようで、口をもごもごし始めました。保育者が「おいしいかな」とスプーンを差し出すと、すぐ口に含み保育者の顔を見て笑顔で応えます。安心し喜んで食べ、心地よい生活を味わっています。
素材の味を大切にしながら、その子どもに合わせて離乳食を進めます。「食事の食べ具合はどうかな?」と子どもの様子も見に行きます。
排出、食事、着脱、睡眠において、ゆるやかな担当制を取り入れています。
手順を決め、毎回その手順を守ることを大切にしています。
それは子どもにとって、安心できる場となり、心地よい生活を送ることができるからです。
そして、子ども自身が次の動きを予測しやすくなり、やがて自立することにつながっていきます。
食事はいつも同じ場所でとり、その子の発達に合わせた食事を進めます。
また、食具の持ち方、食器を支える手なども、じっくりと伝え
食文化を知っていくことにもなります。
同じ場所で、いつもの保育者との食事だから安心した時間を過ごすことができます。「あぐあぐ、あぐあぐ、おいしいね」と伝えます。自然と噛むことを身につけていきます。
目を合わせて「これ食べる?」「うん、食べる」
「どれが食べたいかな」「これが食べたい」と、指を差します。子どもと保育者の関係ができているから自分の思いが伝えられます。
園でも一人ひとりの誕生日を大切にしています。
他のこどもたちと同じ献立でも、盛り付けや食器を変えるだけで、
その子だけの特別なバースデープレートになります。
誕生日の子どもは、当日朝から、調理室の前を行ったり来たりソワソワしています。
自分からこういうものを作って欲しいとリクエストすることもあります。
どの子も目の前に出されたバースデーランチに笑みを浮かべます。
そして、食事が終わると、満足そうな表情を見せてくれます。
そして、「つぎはだれ?」「わたしはいつ?」
と聞きながら、楽しみに待つことを知ります。
人々が築き、継承してきた様々な文化的、
情緒的なものを食事を通して伝えていきたいと思っています。
例えば、七夕ではそうめんを使った献立を取り入れ
食材を星型にして夜空をイメージします。
冬至ではかぼちゃ料理を取り入れ、由来も伝えます。
こうした年中行事の料理に出会い「ハレとケ(非日常と日常)」を知る機会となります。
また、子どもだけでなく、家庭にも伝えられるようにします。
昔から伝わる文化、伝統を伝えられるよう工夫をしています。
中秋の名月の頃、園でお月見を再現しました。「昨日、おうちでお月見をしたよ」「おだんご作ったよ」と伝えてくれました。また、ディスプレイすることにより、子どもと保護者の会話がよく聞こえてきました。
収穫感謝祭では、家庭から持ち寄った果物や野菜、園庭の菜園の収穫物を献げます。収穫の恵みを喜び、感謝したり、いろいろな人の働きによって支えられていることを知ったりします。そしてみんなで収穫の喜びを分かち合います。
園の食事をおたよりで発信するとともに、サンプルケースを通しても保護者に伝えています。
お迎えの時、子どもと保護者の会話が聞こえてきます。
「今日のごはんは、これ食べたよ」「えっ、このお野菜を食べられたの?」と、保護者の声から驚きと喜びが伝わってきます。
また、子どもたちが好んで食べたもの、手軽に作れるもの、旬の食材を使ったものをレシピにしています。
時には保育者も加わり会話が広がる場にもなります。
社会福祉法人カナン福祉センター
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